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リスキリングとは?メリットや実施ステップ、注意点などを解説
リスキリングは、社会変化などに応じて、今後求められる知識やスキルを新たに学んでいく取り組みを指します。変化の激しいビジネス環境において競争力を維持するためには、リスキリングによって従業員の知識やスキルをアップデートしていくことが重要です。
本記事では、リスキリングの定義や注目されている理由、メリット、実施ステップ、注意点などを解説します。
1. リスキリングとは
はじめに、リスキリングの概要や注目されている理由、リカレント教育・生涯学習との違いについて解説します。
リスキリングの概要
リスキリング(Reskilling)とは、社会や技術の変化に応じて新たな知識やスキルを学んでいく取り組みです。経済産業省では、リスキリングを以下のように定義しています。
「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」
出典:経済産業省「リスキリングとは―DX時代の人材戦略と世界の潮流―」
人生100年時代と言われる現代において、リスキリングは企業・個人ともに重要な取り組みとなっています。
リスキリングが注目されている理由
リスキリングが注目されている理由としては、主に以下の点が挙げられます。
- 企業や自治体などの組織においてDX推進の機運が高まっている。
- 新型コロナウィルスの流行により、テレワークへの移行など働き方改革が急速に進んだ。
- 2020年に開催されたダボス(世界経済)会議で、2030年までに全世界で10億人規模のリスキリングを行う旨が発表された。
- 日本においても政府が掲げる「新しい資本主義」の実現に向けて、個人のリスキリング支援に5年間で1兆円を投じる方針が示された。
DXや働き方改革、国による大規模な投資などを背景に、リスキリングは大きな注目を集めています。
リカレント教育との違い
リスキリングに似た用語としてリカレント教育があります。両者の主な違いは以下のとおりです。
- リカレント教育:個人の意思で職場から離れて大学などで新しい知識・スキルを学ぶ
- リスキリング:現在の仕事を行いながら、今後必要となる知識・スキルを学んでいく
一旦職場から離れて学び直すリカレント教育とは異なり、仕事を続けながら新たな知識・スキルを学んでいくことがリスキリングの特徴です。
生涯学習との違い
リカレント教育のほかに、生涯学習という用語もよく使われます。リスキリングと生涯学習の主な違いは以下のとおりです。
- 生涯学習:仕事・キャリアに限らず、スポーツや趣味など幅広い分野を対象に学んでいく
- リスキリング:仕事・キャリアの分野で今後必要となる知識・スキルを学んでいく
生涯学習ではスポーツや趣味なども含めて幅広い分野を学ぶ一方、リスキリングの学習対象は仕事・キャリアに関する分野です。
リスキリングとリカレント教育、生涯学習の違いをまとめると下表のようになります。
リスキリング | リカレント教育 | 生涯学習 | |
---|---|---|---|
学習分野 | 仕事・キャリア | 仕事・キャリア | 仕事・キャリア以外も含めたさまざまな分野 |
主導 | 企業 | 個人 | 個人 |
現職との関係性 | 現在の仕事を続けながら学び直す | 職場から離れて大学などで学び直す | 在職・離職問わない |
2. リスキリングのメリット
続いて、リスキリングのメリットについて、以下の点を解説します。
- 業務効率化につながる
- 社内でイノベーションを創出しやすくなる
- 人材不足に対して効率的に対応できる
業務効率化につながる
リスキリングの大きなメリットは、業務効率化につながる点です。たとえば、リスキリングでデータ分析スキルを習得すれば、データの収集・分析作業を効率化・自動化でき、作業時間の大幅な短縮につながります。
業務効率化の実現により、企業にとっては残業代コストの減少、従業員にとってはワークライフバランスの向上などの効果が期待できるでしょう。
社内でイノベーションを創出しやすくなる
社内で新たなアイデアや業務プロセスなどのイノベーションを創出しやすくなる点もリスクリングを行うメリットです。新しい知識・スキルを身につけることで、既存の業務に対しても新たな発想や視点で考えられるようになります。
既存事業のマンネリ化や収益の停滞に悩んでいた企業でも、リスキリングをきっかけに新商品の企画や業務プロセスの革新を実現できる可能性があるでしょう。
人材不足に対して効率的に対応できる
日本では少子高齢化に伴い、IT人材を中心に人材不足が大きな課題となっています。経済産業省のDXレポートによると、2025年にはIT人材不足が約43万人まで拡大すると予想されています。
このような状況下では、外部から高いスキルを持った人材を採用することは容易ではありません。社内の従業員に対してリスキリングを行うほうが、人材不足を効率的に解消できるでしょう。
出典:経済産業省「DXレポート」
また、最先端の技術を持った外部人材を採用したからといって、必ずしも自社の競争力強化につながるとは限りません。自社の事業や顧客に精通した社内人材に対してリスキリングを行うほうが、学んだ知識・スキルを自社の業務プロセス改革などの成果につなげやすくなります。
3. リスキリングの実施ステップ
ここでは、リスキリングの実施ステップを以下の4つに分けて解説していきます。
- リスキリングの対象分野を決定する
- リスキリングのプログラムを構成する
- リスキリングを実施する
- リスキリングで学んだ知識・スキルを活かしながら職場での実践を行う
1.リスキリングの対象分野を決定する
はじめに、自社の経営戦略や人材戦略に基づき、リスキリングの対象分野を決定していきます。対象分野を決めるうえでは、現在の従業員のスキル保有状況の棚卸しを行い、目指す状態とのギャップを明確化することが重要です。
目標と現状のギャップが明確になったら、現在不足している知識・スキルを中心にリスキリングの対象分野を決定していきましょう。
2.リスキリングのプログラムを構成する
リスキリングの対象分野を決定したあとは、リスキリングのプログラムを構成していきます。プログラムを構成する際は、コンテンツ自体のクオリティだけではなく、学習の順番やコンテンツの構成などを考えていくことも重要なポイントです。
また、プログラムの受講形式には研修やeラーニング、オンライン講座、外部講師によるセミナーなどさまざまな形式があるため、自社に適した方法を選択していく必要があります。
3.リスキリングを実施する
プログラムの構成ができたら、リスキリングを実施していきます。基本的には社内の全従業員を対象にリスキリングを行っていくことになるため、人材タイプやスキルレベルなどに応じて複数のプログラムを用意しておくことが望ましいでしょう。
また、学習効果を高めるためには、強制的な学習ではなく本人の希望に基づいたプログラムを選択できるようにすることが効果的です。リスキリングを行う時間については、従業員へのヒアリングなどを行い、希望の実施時間帯に受講できるような環境を整備しておくとよいでしょう。
4.リスキリングで学んだ知識・スキルを活かしながら職場での実践を行う
リスキリングの実施後は、新たに学んだ知識・スキルを実務に活かしていくための機会を提供していきましょう。たとえば、会議のなかで新たなアイデアを創造するための時間を意識的に設け、従業員からリスキリングで得た知識や発想を出し合ってもらう取り組みなどが有効です。
また、それぞれの従業員がリスキリングの前後で生じた実務上の変化を共有したり、お互いの成長点をフィードバックし合ったりすることで、社内でのリスキリングの風土醸成につながります。
4. リスキリングにおける注意点
リスキリングを実施する際は、以下の点に注意しながら進めていく必要があります。
- 企業側だけで一方的に進めないようにする
- リスキリングを目的化しないようにする
- 自社内のコンテンツやリソースだけで解決しようとしない
企業側だけで一方的に進めないようにする
リスキリングは企業が主導して行う取り組みではあるものの、企業側だけで一方的に進めないように注意が必要です。従業員からの理解を得られないままリスキリングを導入しても、期待通りの効果を得ることは難しいでしょう。
あらかじめ従業員にリスキリングのメリットや重要性を説明し、従業員の希望に沿った学習環境やプログラムを提供していくことがポイントです。
リスキリングを目的化しないようにする
リスキリングは、企業の競争力向上を図る手段のひとつであるため、リスキリング自体を目的化しないように注意してください。たとえば、「用意したすべてのプログラムの受講完了」を従業員の評価指標とした場合、プログラムの受講自体が目的となってしまうリスクがあります。
その先の実務での活用までを見据えて、リスキリングを導入することが重要です。
自社内のコンテンツやリソースだけで解決しようとしない
リスキリングを行う際は、自社内のコンテンツやリソースだけで解決しようする必要はありません。
効果的な学習プログラムを構成するうえでは、外部の専門会社のコンテンツなどを取り入れることも有効な手段となるでしょう。
5.まとめ
リスキリングとは、社会や技術の変化に応じて新たな知識やスキルを学んでいく取り組みを指し、DXの流れなどを背景に注目が集まっています。リスキリングを行うことで、業務効率化や新たなアイデアの創出、人材不足の解消などのメリットが期待できます。
リスキリングを行う際は、従業員の希望や意見を尊重しながら、自社に合った学習環境や教育プログラムを整備していくことが重要です。
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