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リスキリングで使える補助金・助成金や効果的な実施ポイントを解説
政府が個人のリスキリング支援として5年間で1兆円を投じる方針を示すなど、リスキリングに対する支援の動きが活発になっています。現在でも、厚生労働省などが企業や個人のリスキリングに対して補助金や助成金などの制度を設けているため、リスキリングを行う際は活用を検討してみましょう。
本記事では、企業や個人がリスキリングを行う際に受けられる補助金などの種類や内容、リスキリングの効果を高めるうえで重要なポイントについて解説します。
1. リスキリングとは
まず、リスキリングの定義や重要性、リスキリングに対する支援の動きについて簡単に解説します。
リスキリングの定義
リスキリング(Reskilling)とは、社会や技術の変化に応じて新たな知識やスキルを学んでいく取り組みです。経済産業省はリスキリングを以下のように定義しています。
「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」
出典:経済産業省「リスキリングとは―DX時代の人材戦略と世界の潮流―」
リスキリングの重要性
ビジネス環境の変化や技術変化が激しく、少子高齢化が進む現代において、リスキリングの重要性が高まっています。特に、デジタル・データを活用して社会やビジネスを変革していくDX(デジタルトランスフォーメーション)の必要性が叫ばれる近年では、IT分野を中心にスキルを獲得していくことが重要です。
加えて、新型コロナウィルスの流行によってオンライン化が進んだため、業務のなかで各種ITツールやクラウドサービスの利用に習熟することも求められています。
リスキリングに対する支援の動き
リスキリングに対する支援の動きは活発化しています。たとえば、世界では2030年までに全世界で10億人規模のリスキリングを行う方針が、2020年のダボス会議で打ち出されました。日本国内においても、個人のリスキリング支援に5年間で1兆円を投じる方針が政府より示されています。
リスキリングについては、以下の記事でも詳しく解説していますので併せてご確認ください。
2. 補助金・助成金・給付金の違い
企業や個人がリスキリングを実施する際は、国や民間団体などから補助金や助成金、給付金を受けられる場合があります。ここでは、補助金・助成金・給付金の主な違いを解説します。
補助金
国や地方自治体が政策を推進するために編成している予算です。企業からの申請を受けて審査を行い、政策を推進するための活動に即していると判断された場合にのみ、企業は補助金を受けることができます。
補助金については、以下の記事でも詳しく解説しています。
助成金
国や地方自治体が企業を支援するために編成している予算です。助成金と補助金の違いは、助成金は要件を満たしていれば原則支給されるのに対し、補助金は審査で落ちる場合もある(支給されない場合もある)点です。
助成金を受ける際は、要件に応じて申請書類や添付書類を準備することが必要です。
助成金については、以下の記事も併せてご参照ください。
給付金
国や地方自治体が個人を支援するために編成している予算です。企業ではなく、個人を対象としている点で補助金や助成金とは異なります。使用用途の制限や受給条件、審査の有無などは給付金の種類によって異なります。
給付金については、以下の記事でも詳しく解説しています。
3.企業がリスキリングにおいて活用できる補助金・助成金
ここでは、企業がリスキリングにおいて活用できる主な補助金・助成金として、以下3つの制度を紹介します。
- ものづくり補助金
- IT導入補助金
- 人材開発支援助成金
- DXリスキリング助成金
ものづくり補助金
ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)は、中小企業・小規模事業者等が各種制度変更(インボイス導入など)に対応できるよう、サービス開発や生産プロセス改善に伴う設備投資などを支援する制度です。
補助金は以下の枠に分かれており、DX推進に関する補助金は「デジタル枠」が該当します。
- 通常枠
- 回復型賃上げ・雇用拡大枠
- デジタル枠
- グリーン枠
- グローバル市場開拓枠など
具体的な金額や補助率、条件などは枠によって異なるため、詳しくは公式サイトの公募要領をご確認ください。
出典:全国中小企業団体中央会「ものづくり補助金総合サイト」
IT導入補助金
IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者が労働生産性の向上を目的としてITツール(ソフトウェア、アプリ、サービスなど)を導入する際に、導入にかかる費用を支援する制度です。IT導入補助金には、以下のような枠が設定されています。
- 通常枠(A・B類型)
- セキュリティ対策推進枠
- デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)
補助金の上限額・下限額や補助率は、それぞれの枠によって下表のとおり異なります。
通常枠 | セキュリティ対策推進枠 | デジタル化基盤導入枠 | |||
---|---|---|---|---|---|
A類型 | B類型 | デジタル化基盤導入類型 | |||
補助対象経費区分 | ソフトウェア購入費・クラウド利用料(最大2年分)・導入関連費 | サービス利用料(最大2年分) | ソフトウェア購入費・クラウド利用料(最大2年分)・導入関連費 | ||
補助率 | 1/2以内 | 1/2以内 | 3/4以内 | 2/3以内 | |
上限額・下限額 | 5万円~150万円未満 | 150万円~450万円以下 | 5万円~100万円 | (下限なし)~50万円以下 | 50万円超~350万円 |
出典:一般社団法人 サービスデザイン推進協議会「IT導入補助金2023」
人材開発支援助成金
人材開発支援助成金は、厚生労働省が実施している助成金の制度です。企業が従業員に対して計画的に知識やスキルを習得させるための職業訓練などを実施した場合に、国が費用の一部を助成します。人材開発支援助成金には、以下7つのコースがあります。
1.人材育成支援コース
人材育成支援コースは、従業員に対して職務に関連した知識・スキルを習得させるための訓練や厚生労働大臣の認定を受けたOJT訓練、非正規雇用者の正社員登用に向けた訓練を実施した場合に費用の一部が助成されるコースです。
2.教育訓練休暇等付与コース
教育訓練休暇等付与コースは、従業員が有給休暇を取得して自主的にスキル習得に向けた訓練などを受けた場合に費用の一部が助成されるコースです。
3.人への投資促進コース
人への投資促進コースは、企業が社内でデジタル人材・高度人材を育成する訓練や定額制(サブスクリプション型)の訓練を実施した場合に、費用の一部が助成されるコースです。
4.事業展開等リスキリング支援コース
事業展開等リスキリング支援コースは、企業が新規事業の立ち上げなどに伴い、従業員に対して新たな分野の知識やスキルの習得に向けた訓練を実施した際に費用の一部が助成されるコースです。
5.建設労働者認定訓練コース
建設労働者認定訓練コースは、建設分野の認定職業訓練や指導員訓練を行ったり、建設労働者に有給で認定訓練を受講させたりした場合に費用の一部が助成されるコースです。
6.建設労働者技能実習コース
建設労働者技能実習コースは、企業が建設労働者に対して技能向上のための実習を有給で受講させた場合に費用の一部が助成されるコースです。
7.障害者職業能力開発コース
障害者職業能力開発コースは、障害者の職業能力の開発・向上を目指し、教育訓練を継続的に実施するための施設の設置・運営を行っている場合に費用の一部が助成されるコースです。
出典:厚生労働省「人材開発支援助成金」
DXリスキリング助成金
DXリスキリング助成金は、公益財団法人 東京しごと財団が実施している助成金の制度です。東京都内の中小企業などが従業員に対して、DXに関連した職業訓練(集合訓練やeラーニング)を実施する際に助成金を受け取ることができます。
申請できる企業には資本金や従業員数の条件があります。たとえばサービス業では、資本金5,000万円以下、従業員数100人以下が条件です。また、助成額は1社につき対象費用の3分の2まで、または年間64万円の上限が適用されます。
出典:公益財団法人 東京しごと財団「DXリスキリング助成金」
4. 個人がリスキリングを行う際に利用できる給付金
個人がリスキリングを行う際に利用できる代表的な給付金として、教育訓練給付制度があります。厚生労働省が個人向けにリスキリング費用の一部をサポートする制度であり、以下3つの種類に分かれています。
- 専門実践教育訓練
- 特定一般教育訓練
- 一般教育訓練
専門実践教育訓練
専門実践教育訓練は、労働者の中長期的なキャリア形成に向けた教育訓練が対象であり、受講費用の50%(年間上限40万円)が支給されます。また、仕事で必要な資格を取得し、訓練修了後1年以内に雇用された場合には、受講費用の20%(年間上限16万円)が追加で支給されます。
専門実践教育訓練については、以下の記事でも詳しく解説しています。
特定一般教育訓練
特定一般教育訓練は、労働者の速やかな再就職や早期のキャリア形成に向けた教育訓練が対象であり、受講費用の40%(上限20万円)が訓練修了後に支給されます。
一般教育訓練
一般教育訓練は、雇用の安定や就職の促進に向けた教育訓練が対象であり、受講費用の20%(上限10万円)が訓練修了後に支給されます。
出典:厚生労働省「教育訓練給付制度」
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5. リスキリングの効果を高めるうえで重要なポイント
リスキリングの効果を高めるためには、以下のポイントを押さえることが重要です。
- 従業員の学習意識を高める
- 実務で活用する機会を意識的に設ける
従業員の学習意識を高める
リスキリングは企業側が主導する取り組みですが、実際に学習を行うのは従業員であるため、従業員の学習意識を高めることが重要なポイントです。従業員の学習意識を高めるには、リスキリングは企業のためだけではなく、人生100年時代における従業員本人のキャリア形成にもプラスに働く取り組みであることを説明する必要があります。
また、従業員にアンケート調査を取るなどして、新たに学びたい分野やテーマの情報収集を行うことも効果的です。ほかにも、学習意欲を高める手段として、リスキリングでの資格取得にインセンティブを設けたり、昇進試験の要件に設定したりすることも有効となるでしょう。
実務で活用する機会を意識的に設ける
リスキリングはインプット学習だけで終わらせず、習得した知識やスキルを実務で活用することで大きなメリットを享受できます。そのためには、実務で活用する機会を意識的に設けることが重要です。
たとえば、Excelを使ったデータ分析スキルを新たに習得した場合、最初は多少時間がかかっても、複数のグラフを作成してデータの分析や考察を行う機会を作ってみるとよいでしょう。
6.まとめ
リスキリングへの関心は世界的に高まっており、日本国内においても政府が個人のリスキリング支援に5年間で1兆円を投じる方針などを示しています。リスキリングを実施する際は、企業・個人ともに支援制度を活用でき、企業に対する補助金・助成金としてはものづくり補助金や人材開発支援助成金などがあります。
リスキリングの効果を最大限に発揮させるためには、従業員の学習意識を高めることや、実務で活用する機会を意識的に設けることなどが有効です。
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