事例
- 課題・背景
資格挑戦支援施策について、ルールの解釈やシステム操作などに関する問い合わせが、メールで年間約2,000件寄せられていた
申請の約35%に不備があり、差し戻しや再申請のやり取りが、承認する人事側・申請する社員側の双方の負担になっていた
社内でMicrosoft Copilot Studioの知見を持つのは一部の部門に限られ、人事部門ではAIエージェント構築を自走するのが難しい状態だった
- 効果
問い合わせに、AIエージェントがマニュアルや規程を参照し、出典付きで一次回答できる仕組みを実現
テスト段階で「人が対応するよりも均一な回答が期待できる」という手応えを獲得。全社展開後はFAQの拡充とともに、担当者に届く問い合わせを最終的に1割程度まで減らすことを目指す
「人ではなくAIに伝わるナレッジをつくる」という意識が部内に広がり、FAQをナレッジとして蓄積していく機運が向上
ポイント
- Teams・Microsoft 365 Copilot・SharePoint・Copilot Studioなど、既存のMicrosoft環境のみで構成
- 質問をトピックに分類し、トピックごとに参照するナレッジを指定することで回答精度を向上
- 開発の代行ではなく、作り方のレクチャーとFAQ設計・運用設計までを一貫してきめ細かくサポート
- 対象者
総務人事部キャリアデザイン室
- PJT期間
2026年7月〜9月(約2ヶ月)
- 内容
全社で加速するAI活用、年間約2,000件の問い合わせ対応にも生かしたい
― 御社ではAIやAIエージェントの活用に、どのように取り組まれていますか?
江﨑様:
全社員がCopilotを使える環境を整えており、AIを前提に業務を進めることが全社的に浸透してきています。その流れに乗る形で、AIエージェントの作成事例もさまざまなところで生まれています。社員単位の市民開発的な小さなものから、全社をまたぐ大きなものまで規模も大小あります。開発コンテストでもAIエージェントの事例が出ており、コミュニティも含めて活発に取り組みが生まれている状態です。
Copilot Studioについては、上期までは公開範囲を限定したテスト環境での提供でしたが、最近全社の商用環境に開放され、下期から本格的に活用していける状況になってきました。
― 今回AIエージェント化の対象となった「資格挑戦支援施策」は、どのような施策ですか。
江﨑様:
ドコモグループの約2万5,000名が使える施策です。ドコモグループでは、マーケティングや人事といった各分野の専門性に資することを前提に対象資格を定め、その資格取得に必要な受験料などの費用を、合格後に全額支援しています。
全社員にそれぞれの専門性を高めてもらうことを目的としています。実際、年齢や等級を問わず幅広い社員に利用されており、2025年度は約5,700件を支援しています。多くの社員が自己啓発として資格取得に挑戦し、それを会社として支援している形です。
― 施策に関する問い合わせは年間約2,000件にのぼると伺いました。どのような内容が多かったでしょうか。
桐原様:
どの資格にどのような条件で何を支払うかは、社内ポータルにすべて文字情報として掲載しています。ほとんどの方はそれとマニュアルを見てスムーズに申請できるのですが、施策のルールが少し複雑で人によって解釈が異なるため、同じ質問がいろいろな方から届きます。「自分が受けた試験のこの特殊な費用は支援対象になるのか」といった個別の確認のほか、「うまく申請できない」「添付はどうすればいいか」といったシステム周りの質問、マニュアルを読めばわかる内容をまず問い合わせてしまうケースも多くありました。
また、内容を確認すると不備があるというケースもあります。その場合はこちらから修正を依頼する連絡をしなければなりません。申請前と申請後の両方でメールでのやり取りが発生し、年間では相当な件数になっていました。
「作ったものを納品」ではなく「作り方から丁寧にサポート」。課題整理から運用設計までを一貫して支援
― パートナーとしてBeyontを選んだ決め手を教えてください。
江﨑様:
別件でやり取りするなかで、今回のご提案を新たにいただいたのがきっかけです。決め手は、作ったものを納品して終わりではなく、最後まで丁寧にサポートしていただける点でした。私たちはこれまでAIエージェントを作ったこともなく、テクニカルな領域が得意なメンバーでもありません。そのなかで、作り方をレクチャーしていただきながら一緒に作れること、そして自分たちに作成のノウハウがたまることに魅力を感じ、ぜひご一緒したいと考えました。
― 実際にプロジェクトを進めてみて、いかがでしたか。
桐原様:
寄り添ってサポートしていただいて本当に良かったと思っています。Copilot Studioは社内でもまだ、情報システム部門など限られた人しか知識や経験がなく、私たちはまったくのゼロからのスタートでした。Power Automateは社内でだいぶ浸透し、総務・人事の部門でも経験者からレクチャーを受けて、どうにか自分たちで形にできるようになりました。ただ、浸透の段階ではどうしても時間がかかります。もしこうしたサポートがなかったら、Copilot Studioに着手するのは数ヶ月先になっていたと思います。
― 構築したAIエージェントをご覧になって、どのように評価されていますか。
北口様:
全社展開はこれからなので、あくまでテスト環境で検証した範囲での評価です。これまでは回答者が複数いるなかで、施策への理解の深さや知識によって、メールのやり取りの回数が変わっていたところがありました。今回はエージェントがマニュアルをしっかり読み込んで一定のさばきができており、人が対応するよりも均一な回答ができそうだという手応えを感じています。人の回答にはまだ届かない部分もありますが、回答の出どころはきちんと探してくれます。テスト段階で用意したFAQもこれから精度を上げていく必要がありますが、現段階としては十分満足できる水準です。FAQを正しく整えていけばさらに改善できるはずで、エージェントの評価は私たち自身にもかかっているのだと、改めて感じています。
― プロジェクトのなかで、特に印象に残ったことはありますか。
北口様:
Copilot Studioの目線で「これとこれができますが、どちらがいいですか」と機能をご提案いただけたのがすごかったです。まるで「歩くCopilot Studio」のようで、私たちだけでは絶対に気づけなかった機能もありました。なかでも、ご提示いただいたFAQのフォーマットには驚きました。「AIにはこう伝えればいいんだ」と、とても勉強になりました。これまでは受けた問い合わせがそのままになってしまっていたものもありましたが、「すぐにナレッジとしてためよう」という共通言語ができました。FAQの様式ひとつでチームのベクトルがそろい、どんどん蓄積していこうという機運が高まったと感じています。業務改善のコンサルティングのような形でご支援いただけたのが、本当にありがたかったです。
目指すは「本当にイレギュラーな問い合わせだけが届く」状態。グループ展開、そして申請審査の自動化へ
― AIエージェントが本格稼働すると、問い合わせはどの程度減るイメージですか。
江﨑様:
段階によると思っています。対象資格は1,000近くあり、個々の資格の受験料や支援範囲など情報が多岐にわたります。そのため、今すぐ問い合わせが半分になるのは難しいという感覚です。情報の蓄積を進めながら、近い将来には半分、最終的には1割ほどになるといいと考えています。本当にイレギュラーなものだけが私たちに届く形を目指したいです。
桐原様:
実は今、数値を日次で集計して、導入前と導入後でどう変化するかを検証しているところです。現状、上がってきた申請の約35%で、否認や修正依頼など何らかの不備が出ています。問い合わせのメールが減るだけでなく、この不備率自体も大きく改善するのではないかと期待しています。
そうなれば、承認する私たちの稼働が減るのはもちろん、社員の側もメールで問い合わせたり、申請を否認されてやり直したりする手間がなくなります。申請側と承認側の双方にメリットがあるので、試算している数値以上の効果があると期待しています。一方で、FAQへのナレッジの流し込みはまだ十分ではなく、長文の質問には正しく回答できないこともあります。そこは私たち自身が頑張っていきたいところです。
― プロジェクトを通じて、副次的な効果や気づきはありましたか。
桐原様:
これまでは人に向けて情報を発信していましたが、これからはAIやシステムを意識して資料を作り込まなければいけないと気づかされました。今後はAIやPower Automateを組み合わせて業務を自動化していく世界が広がっていくはずです。その前提にマインドが切り替わる、良いきっかけになりました。
また、グループ会社の育成担当に使ってみせたところ、「自分たちの別の施策や問い合わせ業務でも十分活用できそうだから、やってみたい」という声もありました。
― 全社展開に向けて、どのように進めていく予定ですか。
桐原様:
3段階での展開を考えています。1段階目は私たち自身が使う、2段階目はグループ各社の育成担当が使う、そして3段階目でようやく社員に公開します。今は1.5段階目あたりです。社内の調整がつき次第2段階目に進み、さらにすぐ社員へ展開したいと考えています。年明けから私たちの繁忙期に入るので、その前にぜひ展開したいです。
また、当初はPower Automateを組み合わせて有人窓口へのエスカレーションまで自動化する構想でした。社内の環境整備を待つ必要がありますが、完成形のイメージはすでにいただいています。整い次第、自分たちで、あるいはBeyontにご協力いただきながら実装し、すべてを自動化していきたいです。
― 問い合わせ対応以外にも、自動化したい業務はありますか。
江﨑様:
プロジェクト当初から「できたらいいな」と話していたのが、申請を審査する側の自動化です。現在はグループ会社で実施しており、合格証と申請内容が一致しているかなどを人が一件ずつ目視で確認しています。社員から上がってきた申請を自動でチェックし、不備があればコメントを付けて差し戻す。ハードルは高そうですが、ゆくゆくはそうした自動化にも挑戦してみたいです。そして、他の部署にもニーズがあると思うので、横展開を進めたいです。
― AIに任せられる業務が増えるなかで、人が担う役割はどのように変わっていくとお考えですか。
江﨑様:
個人的には、資料作成などもかなりAIに任せられるようになってきた実感があります。これまでは説明資料を作る、データを分析するといった工程に時間を取られていましたが、それが大きく減り、企画などの上流工程に時間を割けるようになりつつあります。社員がより成長するためにどんな施策が必要かといった大きな問いに向き合う時間が、以前より増えてきていると感じています。
― 最後に、今後Beyontに期待することをお聞かせください。
江﨑様:
AIやテクノロジーはどんどんアップデートされていくので、社員全員が学び続けなければならないと考えています。ただ、私たち自身も日々の業務に追われるなかで、最新情報をキャッチアップするのはどうしても難しいところがあります。引き続き情報交換をさせていただきながら、育成担当として、社員がAIやテクノロジーに関するスキルをアップデートし続けるための教育の面でも、ご一緒できればうれしいなと思っています。
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