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事例

事故分析AIの構築から全社アイデアソンまで──過去データ約1,000件を「戦略的資産」に変え、AI活用の機運を全社へ広げる伴走開発

日本郵船株式会社
物流・流通
日本郵船株式会社
500〜5,000名未満 / AI・AIエージェント開発 / Copilot活用
定期船事業、航空運送事業、物流事業、自動車事業、ドライバルク事業、エネルギー事業、その他の事業
公開日:  更新日:
日本郵船株式会社
課題・背景

SharePoint Listに蓄積された約1,000件の過去の事故データが、検索性や操作性などシステム側の課題により、網羅的な集計や高度なデータ利活用にまで反映しきれていなかった

報告書を1枚ずつ手作業で開いて内容を確認する業務負担に加え、確認精度が担当者の経験や集中力に左右されやすいことや、ノウハウが特定の担当者に蓄積されやすいという課題を抱えていた

社内でCopilot Studioの検証を進めていたものの期待する回答精度が出ず開発の壁にぶつかっていた

効果

自然言語による質問から傾向分析および棒グラフやヒートマップによる可視化までを言葉一つで行える仕組みの実現

サンプルデータを用いた約2ヶ月のベンチマーク検証において、実務適用への高い手応えを獲得

アイデアソンの開催によりAIネイティブ組織への意識改革を推進し、データ整備の重要性に関する全社的な共通認識の醸成に貢献

ポイント

  • Copilot StudioやPower Automate、AI BuilderにOffice Scriptsを組み合わせた最適なアーキテクチャの選定
  • Pythonや生成AIを活用して表記揺れのある非構造化データを統合する実践的なデータ前処理パイプラインの実装
  • ツール開発にとどまらず複数部署を巻き込んだアイデアソン開催による組織チェンジマネジメントのワンストップ支援
  • 対象者

    自動車事業統轄グループ

  • 期間

    2ヶ月

  • 内容

    AIエージェント構築支援サービス(Microsoft Copilot Studio / Power Automate / AI Builder / Office Scripts)
    ・AIエージェント企画創出講座

日本郵船株式会社(以下、日本郵船)の自動車事業は、世界最大規模である約120隻の自動車専用船隊を擁する海上輸送部門と、内陸での輸送や保管を担う自動車物流部門で構成され、海上から内陸まで一貫した高付加価値のサービスをグローバルに提供しています。同事業において輸送品質の維持・向上を専門に担う自動車事業統轄グループでは、顧客へ品質の高い輸送サービスを提供し続けるため、輸送・荷役中に発生した事故報告書データの収集や原因分析、再発防止策の立案に日々取り組んできました。この報告書データ約1,000件を活用するため、同社は株式会社スキルアップNeXt(以下、スキルアップNeXt)をパートナーに迎え、Microsoft Copilot Studioを活用した「自動車事故報告書分析エージェント」のMVP(Minimum Viable Product:実用最小限の製品)構築に着手。わずか2ヶ月という短期間で現場に実用感をもたらしたプロジェクトの背景と、その先に見据える全社的な組織変革について、プロジェクトを牽引した等々力様と北野様にお話を伺いました。

検索性の壁に阻まれた約1,000件のデータ。人の手に依存する分析業務の限界

― 導入前、御社のAI活用はどのようなご状況でしたか?

等々力様:

当社では、全社を挙げてAIをより一層活用していこうと全社的に取り組みを始めたばかりで、まさに今、全社員参加型のAI実装やコミュニティの盛り上げに注力しているところでした。

― 導入にはどんな背景がありましたか。

北野様:

自動車の運送に関する事故報告書データに、課題がありました。これまで、発生してしまった事故の報告書は、SharePoint Listに格納する運用をとっていました。過去のデータは1,000件ほど蓄積されていましたが、SharePoint Listの操作性や検索性が十分ではありませんでした。例えばキーワードで検索をかけても必ずしも100%引っかかるわけではないというシステム上の限界に苦心していました。そのため、膨大な過去データを横断して網羅的な傾向分析や全体集計を行う実務には、システム的な制約がありました。過去のデータを元に集計や深い分析を行うには、担当者が毎回ファイルを1枚ずつ手作業で開き、今回の分析対象に該当するかどうかを一件一件目視で判断していく必要がありました。 この膨大なデータを人の目と手で読み解く作業は極めて負担が大きく、見落としや抜け漏れのリスクも抱えていました。また、担当者の異動などによってノウハウが属人化してしまうことへの危機感もあり、データという貴重な資産をより迅速かつ高度に実務へ反映していくことが大きな課題でした。

― スキルアップNeXtを選んだ決め手を教えてください。

等々力様:

当社内にもCopilot Studioの検証チームがあり、グループ会社とも連携して検索系のエージェントをいくつか試していました。しかし、標準機能だけでは業務要件を満たす回答精度を出すことが難しく、開発の壁にぶつかっていました。その中で、マイクロソフトの最上位パートナー資格「Microsoft Copilot Specialization」取得企業であり、データエンジニアリングの深い知見を有するスキルアップNeXtであれば、この状況を打開してくれると考え、開発支援を依頼しました。開発だけでなく、実践型研修の実施までを見据えて伴走してくれるスタイルも、当社が目指す自走体制の構築に合致していました。

2ヶ月のアジャイル開発で高い実用性を実証。言葉一つでグラフ化まで行うAIの実感

― 実際に支援サービスを実施してみて、いかがでしたか?

北野様:

約2ヶ月という非常に短い期間で、動くAIエージェントを構築していただきました。今回は約1,000件のデータから22件をサンプルとして抽出して検証を行いましたが、自然言語で「どのようなシチュエーションで起きているか」と問いかければ、AIが意図を正しく汲み取って集計結果を返してくれます。

さらに素晴らしかったのは、文字ベースの回答にとどまらず、その数値を棒グラフやヒートマップといったビジュアルに自動で整形して出力してくれる点です。これまではExcelにデータを入力し、グラフを手作業で作成したうえでPowerPointに反映していたため、言葉一つで可視化されるスピード感には大変満足しています。

技術的には、Excelのフォーマットが複数存在することや、添付ファイルの中身をAIが直接読み込めないといった制約が当初の壁となりました。しかし、スキルアップNeXtから「Pythonを使ってデータをマッピングし、一度1つのCSVに落とし込めばうまくいく」といった具体的な実装プログラムの示唆をいただき、Copilot Studio、Power Automate、AI Builder、そしてOffice Scriptsを組み合わせたデータ前処理パイプラインを構築することで乗り越えられました。AI単体ではなく、周辺技術と適切に組み合わせるノウハウの重要性を強く実感しました。

― 実際に利用した方の反応はいかがでしたか?

北野様:

実際に利用した現場のメンバーからは、実務適用への高い手応えを感じているという評価を得ています。これまでは担当者が毎回ファイルを1枚ずつ手作業で開いて内容を確認する業務負担がありましたが、エージェントの活用によってその負担はかなり減らせるという手応えがあります。定例の報告資料作成にかかっていた1〜2時間の業務が30分程度に削減される効果も見込まれています。現場からは、上長への報告資料の自動生成まで対応できれば理想的だとの声も上がっており、集計結果から定型レポートを直接出力する機能についても、スコープに加えて検討を進めています。

しかしそれ以上に、これまではシステムの制約により全体集計や網羅的な把握が難しかった膨大な過去データを元に分析を行い、事故傾向を高速に俯瞰できるようになったこと自体が大きな新規価値の創出です。事故情報の深掘りから質の高い対策を立案し、お客様に対しさらに品質の高い輸送を提供できる道筋が見えました。また、元データの置き方やデータ整備のあり方そのものを見直す必要があるという点について、関係者間で目線合わせができたことも大きな収穫です。

マネージャークラスからも「これができるなら、こういう業務にも横展開できるのではないか」といった具体的な相談が早くも寄せられており、今まで手作業で対応せざるを得なかった領域に対しても、「AIを活用すれば効率化できるのではないか」という現実的な手応えが共有され、現場主導でDXを推進する機運が醸成され始めています。

「点」の開発から「面」の組織変革へ。複数部署を巻き込んだアイデアソンを開催し、「AIネイティブ組織」へ

― 開発後に実施されたアイデアソン(AIエージェント企画創出講座)の成果について教えてください。

等々力様:

自動車事故報告書分析エージェントのMVP構築という「点」の開発成果を、組織全体の「線」や「面」の自走体制へと広げていくため、プロジェクト後半に、全社から組織を横断した部署のメンバーが集まる実践型の研修(AIエージェント企画創出講座/アイデアソン)を実施しました。

これは、スキルアップNeXt側から「ツール開発にとどまらず、ユースケースの創出とアイデアソンをセットで行うのはどうか」というご提案をいただいたことがきっかけで実現した施策です。

研修では、普段は時間を取ってじっくり話す機会が少ない異なる部署のメンバーが交わり、現行業務(As-is)の足元の業務フロー整理を重点的に行いながら、課題や本当に解決したいことについて熱いディスカッションが展開されていました。受講者アンケートでも、異なる部署のメンバーとじっくり話せたことへの高い評価が集まっています。

業務のどこにモヤモヤがあり、どうデータを整理すべきかという「AI Readyなデータ設計」の重要性を、組織を横断して腹落ちできたことが、チェンジマネジメントにおける一番の成果でした。

講師の方から「AIを活用する上で最も大事なのは、足元の業務フローやデータの整理である」という本質的なメッセージを一貫して伝えていただいたことが、受講者にとって非常に大きな学びであると考えています。

― 今後の展開を教えてください。

等々力様:

今回の事故報告書の事例は、社内でも同様の課題を抱えている部署が多いため、まずはこれを成功のベストプラクティスとして社内ポータル等で共有し、SharePoint Listを利用している安全管理や運航管理といった他部署への横展開を強力に進めていく計画です。

データが整備されていないと、いかにAIの技術が進化しても社内データは使えないままになってしまいます。今回確立したアプローチを元に各部署のデータ環境を底上げし、最終的には誰もが自律的にAIを使いこなして業務課題を解決できる自己解決型組織、そして AIネイティブ組織への変革を推進していきたいです。立ち上げたばかりのこの取り組みを加速していく中で、今後も様々な壁にぶつかると思いますが、スキルアップNeXtには引き続きデータ前処理のあり方や蓄積方法について、心強いアドバイスと伴走支援をいただけることを期待しています。

スキルアップAIでは、様々な業界業種で1,000社以上の企業・自治体のAI/DX推進を支援しています。
ITやデジタルなどのDX推進、​​​​​​AI開発や生成AI活用などのAI導入/推進における、幅広い業界の人材育成の事例集をご用意しておりますのでぜひAI/DXの人材育成にお役立てください。

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