事例
- 課題・背景
生成AIなどの技術進化が非常に速く、従来の基礎的な講座だけでは最新情報に追いつけない危機感があった。
社内版ChatGPTなどの環境整備は進んでいたものの、実際の業務での高度な活用に結びついている社員が少なかった。
データ分析を学んだ社員が配属された後に、現場で具体的に相談できる相手がいないという孤立化の問題も発生していた。
- 効果
生成AIの最新情報を踏まえた講座を通じて、受講生が自律的に業務課題を解決するためのアプリを開発できるようになった。
時系列数理最適化のスペシャリストから直接学ぶことで、理論だけではないビジネス視点でのデータ活用法が浸透。
事務局も講座を受講したことで、現場からの相談に対してより的確な助言が可能になった。さらに、今後は高度なデータ分析に関する研修の内製化を見据えて、さらなるスキルアップを目指している。
ポイント
- 一定以上のスキルを保有する社員向けに、時系列数理最適化と生成AIについて学べる2つのコースを提供
- 理論の学習だけで終わらせず、実際の業務課題を解決するためのアプリ開発などを組み合わせた研修で、短期間で実務に耐えうるツールを自力で構築できる人材の育成に成功
- ビジネス経験が豊富な講師陣により、学習だけで終わらせず、実務に即したデータ分析ができるように。
- 対象者
DICTの時系列数理最適化コース4名
- 研修期間
約2か月
- 研修内容
「現場で使える異常検知基礎講座」「時系列解析講座」
※2025年度のDICTの2コース(生成AIコースと時系列数理最適化コース)うち、スキルアップNeXtは「時系列数理最適化コース」で上記2つの講座を担当
DX人材育成のためのダイキン情報技術大学(DICT)、設立8年目を迎え様々な成果が。
― DICTについて教えて下さい。
板谷様:
当社は、空調事業を中心とした製造業として発展してきましたが、近年のデジタル化により、ハードウェアだけでなくソフトウェアが重要になる中、デジタル人材の確保が大きな課題となっていました。外部採用による優秀なデジタル人材の獲得競争が激化していることから、社内で人材を育成する方針を掲げ、2017年にDICTを設立しました。DICTでは、ドメイン技術(空調などの業界知識)とデジタル技術の両方を理解し、部門横断的にイノベーションを実現できるπ(パイ)型人材の育成を目指しています。
設立当初は、2020年度までに新入社員1,000人をIPAのITスキル標準でいうところのレベル3まで到達することを目標にしており、無事に達成しました。その後も目標を上方修正し続け、2025年度末には2,000人まで育成することを目指しています。副次的な効果として、社内教育が充実して社内のスキル水準が向上したことで、レベル5、6相当のハイレベル人材の採用ができるようになったことがあります。
これまでは、新入社員、既存社員、マネジメント層、経営層の4段階に分けた研修プログラムを実施してきましたが、8年が経過し人材育成が進んだため、ITスキル標準のレベルとスキル内容に合わせた講座ラインナップに変更しました。さらに、講習は大阪大学など外部の機関に委託していますが、専門スキルを持つメンバーが事務局に加わり、基礎講座など一部の講座は内製できるようになっています。
そこで、大阪大学には生成AIの一般論など新領域を請け負ってもらっています。1年目は座学で、2年目は事業部門から上がってきた業務上の課題について担当を決めて取り組みます。2年目以降は、研修を経て社内の各部門で活躍していますし、研修から生まれたアプリで、業務で使われているものが多々あります。
さらなるAI活用・データ活用を目指して、新規講座を企画
― 生成AI活用の研修を実施しようと考えられたきっかけを教えて下さい。
建部様:
一つはAI利用の定着です。以前より、社内版ChatGPTを整備し、セキュアな環境で生成AIを活用できるようにしています。しかし、基礎的な生成AI講座は2年目の社員に対象が限定されていることもあり、一部ではチャット形式のAI活用は広まっていますが、既存社員でより高度な活用を実践できる人がほとんどいませんでした。
もう一つは、生成 AIの進化の速さです。AI技術は急速に進化しており、月単位で新しい知識にアップデートしていかないと、取り残されてしまうという危機感がありました。そこで、今年度から一定のスキル基準を満たした社員が参加できるAIの講座を用意することになりました。受講希望者が上司に伝えて、上司が申請するというフローになっています。
― データ分析に関しては、どのような課題や壁を感じていましたか?
建部様:
部門に配属されたDICT卒業生の中には、配属先にデータ分析に精通した人材がいないケースも多く、不明点があっても自ら調査するしかない状況にありました。その結果、新たな知見を得る機会や、他者とディスカッションする場、気軽に相談できる環境が不足しているという課題が顕在化していました。
こうした課題を踏まえ、技術力のさらなる向上に加え、メンバー同士の横のつながりの構築や、講師への相談機会の創出を目的として、2025年度より新たに「データ分析エキスパート講座」を開設することとなりました。
― データ分析の中でも時系列数理最適化をテーマとして選定した理由を教えて下さい。
建部様:
当社で扱うデータは空調運転データ、供給・在庫管理データなど時系列データが多く、異常検知や数理最適化のニーズが高くあったのが理由です。
― スキルアップNeXtを採用した理由を教えてください。
板谷様:
今回の研修全体の企画・運営をしている会社から時系列解析の専門家としてスキルアップNeXtを紹介してもらいました。スキルアップNeXtは、実績が豊富で、高いレベルの講義を提供できると判断しました。
生成AIコースと時系列数理最適化の2つのコースから構成されるデータ分析エキスパート講座
― データ分析エキスパート講座について教えて下さい。
建部様:
2025年7月〜2026年2月にかけて、2コース合わせて30回の構成で実施しました。コースは、生成AIコースと時系列数理最適化コースの2つで、一部基礎的な講座は両コース共通です。生成AIコースでは、生成AIの基礎から実務応用まで、時系列数理最適化コースでは、時系列解析、異常検知、数理最適化について学びました。
― どのようなカリキュラムで実施しましたか。
建部様:
時系列数理最適化コースは、スキルアップNeXtが「現場で使える異常検知基礎講座」「時系列解析講座」を、もう1社が数理最適化を担当し、どちらも講義と演習で構成されました。
スキルアップNeXtの研修は、自部門でのデータ活用方法など業務での応用までがカバーされていました。実務での活かし方、実践方法がイメージできるような工夫がされており、受講後の実務適用を見据えたプロセスとして設計されていると感じました。
また、ライブ配信、対面、グループワークなど異なる形式を取り入れられていたことが新鮮でした。グループワークでは、受講者同士のやり取りで気づきが得られましたし、コーチからの実務経験を踏まえたフィードバックがあったことで、受講者が業務の現場で学んだ分析手法を活かせるプログラムになりました。
現場で本当に使えるデータ分析の力を。今後はさらに裾野を広げていきたい
― 受講者の反応はいかがでしたか?
建部様:
生成AI コースでは、「こんなに簡単にできるのか」という驚きの声が多くあがっていました。時系列数理最適化コースでは、「知識としては知っていたが、活用イメージが湧かなかったカルマンフィルターなどの分析手法の活用方法が理解できるようになった」との声がありました。
― 学んだスキルを業務にどう活かしていきたいですか?
建部様:
生成AI活用については、業務で積極的に活用して、効率化していきたいです。時系列数理最適化については、高度な分析手法の知見が得られたことで、事務局にデータ分析に関する相談があった時に、より適切な判断と助言ができるようになったと思います。
江口様:現在、データ分析の基礎講座を教えていますが、時系列数理最適化などの専門的なことはまだ難しいのが実情です。しかし、研修を通して応用領域の知識取得ができれば、将来的に内製化できる講座内容が拡大すると考えています。
― この講座は、今後も継続していくのでしょうか。
― 建部様
建部様:
はい。今、来年度の研修について相談しています。データ分析者の技術力のさらなる向上に加え、メンバー同士の横のつながりの構築や、講師への相談機会の創出といった課題はまだ残っているため、継続していきたいと考えています。生成AI講座についても、活用する人を増やしていきたいので、基礎的な内容やリスク管理など入門者向けの講座についても新しく企画しています。
もう一つ必要な視点として、事例の共有があります。各部門で実装された最新事例を共有し、受講生同士が学び合える場を作っていきたいですね。
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