事例
- 課題・背景
営業部門がお客様へ提出する自社サービスの見積りについて、SEへの作成依頼が月約100件発生し、依頼者の待ち時間とSEの対応負荷が課題になっていた
依頼時の情報不足やニーズの漏れにより、SEが追加で集計し直す二度手間が生じていた
AI活用に取り組み始めた段階で、AIが本当に業務を代替できるかは未知数だった
- 効果
月約33時間(年間約400時間)相当の作業時間削減を見込む
ベンチマークQA17件でキーワード一致率94%(16/17)。利用者の体感でも約8割の回答が一次回答ドラフトとして納得できる水準
並行して進めた内製開発への技術支援により、社内でAIエージェントを構築するスキルとノウハウを獲得
ポイント
- 「評価→NG分析→対策→再評価」を30回以上反復し、キーワード一致率を76%から94%へ向上
- NGの要因が誤情報ではなく「情報の網羅性」にあると特定し、データ整備と入力フォーマット化の重要性を明確化
- Copilot Studioの講座、定例での技術相談、評価ツールの紹介などで、内製開発に伴走
- 対象者
エンジニアリング本部 エンジニアリング統括部 サービス・基盤開発部
- PJT期間
2026年6月〜8月(約2ヶ月)
- 内容
AIエージェント構築支援サービス(Microsoft Copilot Studio)、伴走支援サービス
月約100件の見積り対応。SEの負荷と依頼者の待ち時間が課題に
― 導入前、御社のAI活用はどのような状況でしたか?
西宮様:
当社では、会社方針の柱の一つとしてAIの活用・導入を掲げています。部門によってはすでに導入・展開が進んでいますが、私たちの本部はちょうど取り組み始めたところです。
会社としては、講習を含む全社的なAIコミュニティなど、希望する社員が参加して知識を吸収できる環境づくりを進めています。その中で私たちの部署は開発部隊という立場にあるので、率先してAIを実装し、その成果を本部内に展開していこうとしています。今回の取り組みも、開発成果の一つとして本部内で共有していく予定です。
― 見積り業務をテーマに選ばれた理由と、当時の課題を教えてください。
西宮様:
当社が取り扱うあるサービスについて、お客様から営業部門を通じて、サービスを提供・運用する部門に見積り依頼が届きます。この依頼が月に約100件あり、依頼する側と対応するSE側の双方で、負担や時間のロスが大きくなっていました。
また、最初の依頼で情報が不足していたり、お客様のニーズが漏れていたりすると、SEが追加で集計し直すことになり、二度手間が生じるケースもありました。こうした業務にAIを活用できるのではないかと考えていました。
― AIエージェントの構築前は、どのような活用イメージをお持ちでしたか?
西宮様:
AIの経験が浅かったこともあり、AIを活用できそうだというイメージはあったものの、本当に業務を代替できるのかは未知数でした。
一方で、展開先の部門からすれば、まず私たち自身が使って効果を実感していなければ、納得してもらえません。そこで、自分たちでやってみてうまくいくことを確かめ、展開先にも「こうすればもっと良くなる」と示したい。そうした思いから取り組みを始めました。

2ヶ月でMVPを構築し、キーワード一致率94%。並行して進めた内製開発で利用者目線の工夫も試す
― 今回構築したAIエージェントについて教えてください。
竹尾様:
今回、Beyontに構築いただいたのは、見積り依頼メールの本文をチャット画面にそのまま貼り付けると、サービスの構成・数量・単価と、その算出根拠を引用元付きで生成するAIエージェントです。
約款情報や価格表、過去の見積り対応のやり取りをナレッジとして参照し、回答が難しい場合は担当SEへエスカレーションする仕組みも組み込んでいただきました。これを2ヶ月という短期間のMVP開発で形にしていただきました。
― 納品されたAIエージェントの回答や、月約33時間(年間約400時間)という削減試算について、どのように感じていらっしゃいますか?
竹尾様:
見積りの構成や金額といった骨子は概ね正確に出力されていて、一次回答のドラフトとして実用に足ると感じています。ベンチマークQA17件でキーワード一致率94%という結果も、ほぼ期待する正解パターンどおりに出力できていることを示しています。
評価結果だけでなく体感としても、8割程度は納得のいく回答が得られている感覚です。仮に回答がずれた場合でも見積り金額の差は十数%以内に収まりそうなので、概算見積り、つまり一次回答としては許容できる水準です。それが月約33時間相当の効果になると考えれば、確かな手応えがあります。
デモや検証結果を見た現場のメンバーからも、「実用性が高い」「このようなものがあれば導入したい」と前向きな反応がありました。
― 依頼者の待ち時間という課題に対して、スピード面ではいかがでしたか?
竹尾様:
今回は、見積り依頼を受けたSEが使う想定で検証しました。これまでは担当SEが自分で調べ、上長の承認を得て、所定のフォーマットに落とし込んで提出する必要がありましたが、まず金額感がわかればよいという場面なら、非常に早く回答できるようになると思います。
将来的に依頼者自身が直接使えるようにするには、入力しやすくしたり、何の見積り依頼かを明確にしたりと、情報を漏れなく依頼できる形にする必要があると考えています。
― 判定NGの要因は、誤った情報の生成ではなく、回答に必要な情報を網羅しきれていない点にありました。この点はどう受け止めていますか?
竹尾様:
回答精度を高めるうえで、参照する元データがいかに重要かを実感しました。約款や価格表を改めて見ると、明文化されていない暗黙のルールが含まれており、AIで活用するにはそうした部分の整備が必要です。
また、依頼メールにどこまで記載されているかや、その表現の仕方によっても回答が変わりました。正解パターンごとに書き方に個性があり、「こちらはうまくいくが、こちらはうまくいかない」ということもありました。入力する情報自体もAIが理解しやすいフォーマットに整える必要があると考え、自分たちの開発ではその点を試してみました。
― 今回は「伴走支援サービス」もご利用いただき、御社内でも並行してAIエージェントを開発されていました。その点はいかがでしたか?
竹尾様:
はい。私たちは今後AIエージェントを開発して社内に展開していく立場ですが、そのためのスキルやノウハウがまだ足りていません。そこで習得を兼ねて、Copilot Studioの講座を受講し、並行して自分たちでもエージェント開発を進めました。
Beyontに作っていただいたAIエージェントをもとに、自分たちなりの工夫も加えたいと考え、たとえばフォーマットに沿って入力できるようにしたり、3種類ある対象サービスのうちどれの見積りかをボタンで選べるようにしたりと、「こんな機能があれば利用者が嬉しいのでは」というアイデアを試しました。すぐに実用できるレベルとまではいきませんが、「こういうことができるんだ」と学べたのは大きな収穫です。
― 自社で開発を進める中で、伴走支援でのサポートは役立ちましたか?
竹尾様:
講座の受講後も、短い間隔で設けていただいた定例の場で質問させていただきました。
たとえば、AIの回答結果をどう評価するかを相談した際には、便利な評価ツールを紹介いただきました。見積りのパターンをボタン一つでまとめて評価できるもので、自分たちが作ったものが精度を出せているかを確認する際に非常に役立ちました。途中経過の技術評価なども共有してくださり、開発のたびに丁寧にアドバイスをいただけたので、参加メンバーの技術向上につながったと思っています。

定型サービスの横展開から非定型サービスへ。AIを「自ら作って広げる」組織を目指して
― 定量的な成果以外に、今回のプロジェクトで得られたものはありますか?
竹尾様:
私たち自身のAI開発スキルを高めるという目的の面では、Copilot Studioのようなローコードツールを使えばAIエージェントを比較的簡単に作れると確認できたことが大きいです。社内へのAI展開を担う立場として、今後の取り組みの加速につなげられると感じています。
― 同様の仕組みが活かせそうな業務はありますか?
竹尾様:
今回は特定の部門が提供するサービスを対象としましたが、当社では多数のサービスを扱っており、それぞれの提供・運用部門に見積り業務があります。取り込むデータを差し替えて同じ仕組みを横展開するだけでも大きな効果が見込めます。まずは他の定型サービスへの横展開から始め、その後は非定型のサービスにも対応できるよう、仕組みを改善していきたいと考えています。
― 最後に、今後の展望とBeyontへの期待をお聞かせください。
西宮様:
見積り支援AIエージェントの本格的な展開に向けては、セキュリティ面のガバナンス整備などが必要です。現在は情報セキュリティ部門やグループ全体の動きと連携しながら、その準備を進めています。
並行して、今回得たノウハウを取り込みながら、自分たちで構築したエージェントのブラッシュアップを進めています。最終的に従業員が確認すべき項目は必ず出てくるので、精度をさらに高めるために、マルチステップの確認フローを検討したいと考えています。また、現在はテキストを貼り付けてやり取りしている部分を、Excelで見栄えよく出力できるようにしたいという要望もあります。
社内の準備が整い、新しいことやより難しいことに挑戦する際には、ぜひまたBeyontにサポートいただけたらと思っています。
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