導入事例
- 課題・背景
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DataRobot(AIツール)を活用し始めたものの、理論や理屈を理解したうえで、AIが出した結果の根拠やビジネス上の効果を示せる説明できる人材が必要だった
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研修で学んで終わりではなく、AIを活用したビジネス成果を創出したかった
- 効果
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AI道場を通じた「故障診断AIアプリ」開発による70%の労力削減、「販売予測AIモデル」構築による誤差率10ポイント改善など、AI活用による業務改善・事業変革の具体的な事例が誕生
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初心者でも数学や機械学習の基礎知識から実践スキルまでを習得
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社内でAI/DXへの関心が高まり、取り組む仲間が増加
ポイント
- ビジネス成果に直結した実践重視のカリキュラム設計
- 初心者も無理なく学べる段階的学習とDataRobot活用
- 理論・理屈の理解と実践(アウトプット)の両立
- PoC発表会や社内コミュニティで認知と仲間づくりを推進
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対象者
部門推薦者、立候補者
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研修期間
約8か月
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研修内容
AIジェネラリスト基礎講座、Python入門講座、機械学習のための基礎数学講座 機械学習講座(DataRobot活用編)、機械学習講座、AI道場(PoC伴走支援)
AIでビジネス成果を創出するために重視したのは「DataRobotとの高い親和性」と「段階的プログラム」
― 御社のDXの取り組みを教えてください。
鈴木様:
当社のDXは、2021年7月に「DX戦略推進プロジェクト」を発足させ、戦略を策定したことから本格的にスタートしました。 全社でデジタル変革を進める上で必要なDX人材タイプを整理したことで人材不足を痛感し、人材育成の必要性を再認識しました。中でも、AIによる課題解決ができる人材育成や体制構築が急務だと考え、AI活用の敷居を下げて門戸を開くために、Pythonや機械学習の専門的知識なしにAIモデルを実装できるDataRobotを導入しました。
― DX研修を取り入れた背景や目的を教えてください。
鈴木様:
DataRobotの活用を進める中で、ビジネスで成果を出すためには「DataRobotを使える」人材を、「理論や理屈を理解して、AIが出した結果の根拠やビジネス上の効果を示せる」までレベルを引きあげる必要がありました。当社では、DataRobotをAI活用の軸と捉えていたため、DataRobot社との親和性が高く、その活用を実践的に学べるスキルアップAIの研修プログラムを導入することにしました。
具体的には、「AIジェネラリスト基礎講座」でAIの基礎知識、「Python入門講座」「基礎数学講座」「機械学習講座」でPythonや数学、機械学習といった専門知識をeラーニングで効果的・効率的に身につけました。その上で、「機械学習講座(DataRobot活用編)」を通じてDataRobotを使った様々な機械学習モデルの実装スキルを学びました。そしてビジネス効果創出のために最も重視したのが、学んだ知識やスキルを実際の業務課題解決に繋げる「PoC伴走支援(AI道場)」です。受講者が自らテーマを設定し、スキルアップAIの講師に伴走いただきながらPoCを実践するというものです。
長年課題視されていた品質損金や販売予測にPoCに取り組み、AIアプリ開発やモデル構築で成果を創出
― 研修を実施していかがでしたか。
鈴木様:
一連の研修を通じて「AI故障診断アプリ開発」「販売予測モデル構築」など具体的な成果が生まれています。
故障診断アプリは、予測AIと生成AIを組み合わせており、DataRobotを活用して開発しました。サービスマンの高齢化によるノウハウ損失や新人の経験不足などアフターサービス領域における品質損金は従来から問題視されていました。
まず故障予測AIについては、整備済故障履歴データを取り込み、DataRobotで分析し、故障予兆モデルを構築しました。しかしアウトプットがExcelのため現場での利便性をあげる必要がありました。そこで、現場で不具合の状況を書き込むと、生成AIが過去のカルテデータから故障原因を割り出し、最適な対処法や交換部品を回答する故障診断アプリを開発しました。
故障診断アプリにより、AIがアフターサービスの修理部品を高い精度で特定できるようになり、お客様への迅速な修理対応と70%労力削減を見込んで実装しました。まだ運用開始直後なので、これからコスト削減にも繋げていきます。作業員の判断ミスを防いで労務負担を減らし、ノウハウの継承にも役立てることができます。また、従来はデータを整える膨大な作業を人が担っていましたが、情報の整理加工に生成AIを活用することにより、データ分類にかかる時間が約6分の1に短縮されました。
販売予測モデルは、社内で販売予測と実績が当たらず、長年課題となっていましたが、DataRobotを活用してAI予測を立てて、統計予測と組み合わせることで、販売予測の誤差率を10ポイント改善できました。また従来はAIエンジニアがモデルを開発しながら、現場オペレーションも進めていました。構築された販売予測モデルがデプロイレベルになったことにより、オペレーションを営業現場に移管できたことも大きな成果の一つです。具体的には、従来のやり方では予測誤差率が15%ずれていたものが、AI活用により約5%に改善され、長年課題だった販売予測にAIで挑み成果をあげたことで、社内の他部署からも評価されつつあります。
道場で集まったテーマのなかには、RPAで完結できるなど「AIに適していない」と結論付けられたものもありました。しかし、手つかずだった課題に対してデータで判断するという思考が身についたことや、すべてAIで解決できるという認識を脱却できたことは収穫だと考えています。
研修でできたAIコミュニティを核に活用の文化を社内外へ
もちろん、当初期待した数のAI専門家を一朝一夕に育成できたわけではありません。PoCで良い結果が出ても、それを実際の業務に展開し、定着させることの難しさも改めて認識しました。それでも、研修を通じて社内にAI活用の「仲間」が着実に増えていることは大きな前進です。
特に、コミュニティサイトを立ち上げ、PoCの成果や、販売予測AIの精度変化や実例集といった具体的な取り組みを共有するようになったことで、これまでExcelで行っていた予測表や集計業務がAIによって効率化され、大量データを可視化できるようになり、社内のAI活用への関心がさらに高まりました。
― 今後の展開を教えてください。
鈴木様:
このAI人材育成の取り組みは、2025年度にはノーリツ単体だけでなく、グループ会社にもに拡大して研修を実施していく計画です。 育成した人材が核となり、各現場でAI活用の成功事例を横展開していくことを期待しています。DataRobot社との共同開発アプリのように、具体的な成果も出てきています。
組織としては、AIモデルを構築する人材と、それを実際の業務オペレーションに繋げる人材の育成と連携を強化します。 また、部門の垣根を越えて社内のAIに関する困り事に対応できるCOE(Center of Excellence)の構築も重要なテーマです。 まずは1箇所に集約した形でのCOE立ち上げを検討しています。 社内コミュニティ活動や外部発表なども継続し、AI活用の文化を社内外に広げていきたいと考えています。
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