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Success Stories導入事例

AIの面白さに気づかせてくれた研修プログラム
全社員のAIリテラシー底上げから、実用化フェーズへ

デンソーテクノ株式会社
製造業
デンソーテクノ株式会社
500〜5,000名未満 / エンジニア / データサイエンティスト / 営業 / 管理職 / E資格 / G検定
大手自動車部品メーカーであるデンソーグループの中で、主に顧客の量産開発・設計工程において、仕様検討から量産対応までのプロセスを担当。技術分野は、ソフトウェア設計・電子回路設計・機器設計と幅広くカバー。
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デンソーテクノ株式会社

社内にAIを広める体制を作るため、E資格合格を目指す研修を実施

研修前の課題・背景

AIを理解している人材の不在、AIを学習する環境の未整備

開発したAI技術がブラックボックスな状況に危機感

研修後の効果

自社独自のAI人材育成方針・体制を策定全社員の1/3がAIを学習

よくわからないので触れないほうがよいという考えから、自主的に動ける状況に変化

研修のポイント

  • JDLA認定プログラム第一号の実績からスキルアップAIを選択
  • 講師の熱量が凄く、教える情報量もとても多かった」の声も
  • 自社の人材育成方針に沿った学習動画教材を作成し、カスタマイズで学習促進を図る

AI技術の知見がないという危機感

― 社内でAI領域のリテラシーの底上げに取り組んだ背景を教えてください。

中村様:

私は車の自動運転で使う車載カメラの技術部門に携わっているのですが、技術の中には当然AIも使われています。AIを搭載した車載カメラで運転を制御したり、人の顔を認識したり、どのような使われ方をしているかはある程度認識していました。

一方で、車載カメラに搭載しているAIを開発しているのは、デンソー本社のR&D部門。自分が扱う商品でありながら、基幹部分の技術については完全にブラックボックスという状況でした。

我々デンソーテクノは、研究分野のような先行開発ではなく、世界中に製品を広めていくための量産化技術を担っています。例えば道路上で認識される標識や高速道路の最高速度制限は、国によって違います。こうした微調整を我々が行うのですが、本社が開発したAI技術を発展させるのに、基幹部分をちゃんと知らないとまずいなという危機感を持っていました。

― そういった危機感を持った上で最初にどんなアクションを起こしたのでしょうか。

中村様:

有志15人ほどが集まって勉強会を開き、本を買って読んで知識を共有したり、一緒に練習問題を解いたりしていました。

ただ、そもそもAIをきちんと理解している人がいないので、勉強の進捗具合もわからない。業務外で集まっているので、仕事が忙しい人はなかなか時間が取れず、集まる人数も日によってまちまち。こうした状況では、なかなか理解が深まらないなという懸念がありました。

そんな中、2017年12月に日本ディープラーニング協会(JDLA)がE資格(エンジニア資格)を作るという話を聞いたんです。E資格を目標にすればAIに関する知識が身につくと思ったので、AIワーキンググループを立ち上げ、最初の目標をE資格の試験合格としました。

E資格を受験するには、協会が認定した事業者の研修を受ける必要があります。認定事業者を調べていたときに、スキルアップAIを知り、認定第1号だったこともあって問い合わせをしました。

まずトライアルとして、研修に組み込まれている数学の講座を受講しました。AIを学ぶ上で最低限必要になる数学の知識を教えてくれる合計20時間ほどの講義だったのですが、この講座がすごくわかりやすかったんです。

講師の熱量が凄くて、教える情報量もとても多い。講師からの質問が頻繁に出て、みんなが納得するまで先に進まないんです。パワーポイントのスライドを使って一方的に進んでいくセミナー形式と違って、塾の先生が教えてくれるような感じでしたね。このやり方だったら、十分な知識が身につきそうだと思えました。講習を受けて、正式に会社として導入を決めました。

会社の2018年の方針として、まずはE資格の合格者を1人生み出し、その人物を中心にAIを広める体制を作る方針が決まりました。その人物になるために、私が受講する運びとなりました。

危機感から面白さに変わった研修プログラム

― 研修はどのように進んでいきましたか?

中村様:

2018年5月から、土日を中心に3か月ほどかけて受講しました。午前中から始まって1日4時間ほど集中的に行うので、講座自体はハードでしたね。初日の講座で大体の内容は理解できたんですが、宿題と課題の量がものすごく多かったです。次回の講座はこれを元に進んでいくと聞いたとき、「これを全部やらないといけないのか」と危機感を感じましたね。

宿題の中身は、考えて解く問題が多かったです。例えば、Pythonで書かれたプログラムが所々空欄になっていて、空欄を埋めた上でどんな動きをするか答える問題がありました。講座できちんと理解していないと、何を埋めたらいいのかもわからないので、講座は集中して聞いていました。

― どのようにしてモチベーションを維持していましたか?

中村様:

研修を受けてE資格に合格した人を中心にAIの活動を進めていく会社の方針は決まっていて、受講しているのは私だけなので、試験に落ちた時点で2018年の会社の方針は達成できなくなります。責任は重大でしたし、絶対に合格しないといけないと思っていました。

ただ、受講していくうちに、純粋にAIが面白いと感じるようになりました。私は元々ソフトウェア技術者なので、プログラミングで動くものを作る考え方に慣れていました。AIはこう動けという風に作るのではなく、AI自体が学習できるような仕組みを用意しておいて、あとは学んで目的の動作をできるようにしようという形の作り方をする。これは新鮮だなと思いました。

AIの理解が深まったおかげで、本社のR&Dが開発していたAI技術も把握できるようになっていきました。それまで、よく分からず触れなかったブラックボックスの部分が分かるようになったのは楽しかったですね。それまでは触らないほうが良いものと認識していたのが、大まかな仕組みがわかるので、自分たちの領域はこうしたほうがいいんじゃないかと考えて動けるようになりました。

面白さに気づいてからは、講座以外で本を買って勉強するなどして理解を深めていきました。その甲斐もあって研修の課題テストは200名中トップとなり、E資格を受けるための合格ラインもクリアできました。

3か月ほど講座を受けて臨んだE資格は手応えがあり、無事に合格できました。ようやく会社の方針のスタートラインに立てて、ホッとしたのを覚えています。

独自に5段階レベルの学習体系を構築

― 会社の方針に沿って、具体的にどんな目標を掲げたのでしょうか?

中村様:

管理職・経営層を含む全社員のAIリテラシーの底上げです。AIを広げる活動をしましょうと言っても、管理職や経営層がAI用語を理解できないと、うまく話が噛み合いません。まずは全社員のAIの知見を高める必要があると考えました。

ただ、そうした活動を先頭に立ってやろうとしたとき、1人では回しきれないと思い、AIワーキンググループに参加する仲間を集めました。

ワーキンググループとして、AIに関する学習体系を5段階レベルに分けて定義しました。例えばレベル1は「会話が成立する」、レベル3は「E資格を持っている」など会社独自でレベル分けをしています。その上で、レベル1に関してはスキルアップAIに学習用動画教材を作成してもらいました。

動画でのアプローチにしたのは、社員の研修時間の確保が難しかったからです。今までの研修は、パワーポイントの資料を元に講師が教えていくスタイルが一般的でした。しかし、研修時間が長いと眠くなる受講者が出るし、社員を集めるための時間確保や調整が大変になる。動画だと空き時間などで視聴できるし、AIを知ってもらうためのとっかかりになると考えました。

もちろん、動画自体は自社でも作成可能でしたが、費用対効果を考えるとプロに任せるほうがいいと判断しました。動画を数分単位でいくつも作ってもらうなど工夫をしてもらった結果、現段階で全社員の1/3に当たる1,000人が動画で学習をしています。

レベル5になると本社のR&D部門に出向し、最前線の技術を身につけるという仕組みにしていますが、まずはそこまで高度な目標を掲げず、社内のAIリテラシーの底上げを進めていきたいです。

村井様:

私はワーキンググループの発足から参画しました。長年、CAE(コンピューターを活用した製品開発の設計技術)の専門家として担当していたのですが、CAE技術が一般的に使われていくようになりました。当時、専門部署として何か新しい技術を取り込み新しい価値を提供しなければならないという危機感がありました。そこでAIとの掛け合わせを考えたのが、AIに関わるきっかけでした。

私が所属していた部署はAIと直接関わりはありませんし、中村さんの部署と製造技術を担当する部署を除けば、AIと直接的に関わりのない部署のほうが圧倒的に多い状況でした。それでも、業務効率化や生産性向上を図る上でAIは必要になってくるし、時代の変化に対応しなければいけません。中村さんの助けもあって、社内でAIの認識は少しずつ広がっていると思います。

社員のAIに対する期待を、成果に結びつける

― 様々な施策に取り組む中で、現在はどのような課題認識でいらっしゃいますか。

村井様:

AI技術をどのようにビジネスにつなげるかが次のテーマです。生産性向上や新しい価値の提案などを目標に掲げていますが、会社の利益に貢献できるようなプランを計画して結果に繋げていこうと考えています。

自動車業界の変化は、これからものすごいスピードでやってきます。今の業務をきっちりこなしつつ、迫り来る時代に対応するためにAIを学び、使いこなす組織を作り上げていきたいです。

― 今後の展望を教えて下さい。

中村様:

私は次の挑戦として、これまで本社の領域だったAIの開発部門に部分的に関わっていこうと思います。社内のAIリテラシー向上のため、自らがロールモデルになっていければと考えています。

村井様:

ワーキンググループとしては、次のG検定(ジェネラリスト検定)までに、全社でG検定合格者を50人出すことが目標ですね。AIに関わる人材は社内でも少数派なので、この数字は初期の目標としては適切だと考えています。社員のAIに関する期待や関心の表れかなとも思います。

実際、社内イベントでスキルアップAIにPython演習の研修を行ってもらった際には、20名の定員に対して37名の応募がありました。研修も好評で、「もっとAIを勉強したい」という声も増えています。社内に危機感を持った人が、中村様のような熱量でAIを勉強してくれるのは、ワーキンググループの目標の1つなので、能動的にAIを学習したい人にはしっかり取り組める環境を整えていきたいです。

 

(お話を伺った皆様)
ADAS2部 第3技術室 課長 中村様
技術企画部 技術戦略室 主任部員 村井様

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